お客様による部品支給、つまり「修理するのにコレ使って」と部品を渡されることがあります。

ガラス風防や機械部品といった単品や、修理品と一緒に別の腕時計ごとお渡しされることもあります。

腕時計の場合はパーツを取り出すドナーです。メーカー修理が終了していたり、部品が入手できないときの切り札となる手段です。

ドナーが修理品とまったく同じ腕時計ならいいのですが、別の時計だと手を焼くことになりやすいです。

ベルト交換してほしいといった内容であればまだ大丈夫ですが、時計の部品となると話は別。

実は部品の持ち込みは意外と厄介です。

トラブルの元になりますし、普通の修理より非常に手間がかかるハメになったこともありました。

群馬県桐生市の(株)福田時計店は腕時計の修理を承ります。

セイコー修理例のご紹介といっしょに「気乗りがしない部品支給の事情」について書いていきます。

2021年もまもなく終わり。

よろしければ、大晦日の除夜の鐘を聞くような気分でどうぞ。

日付表示がないノンデイトのGSグランドセイコー手巻き腕時計をオーバーホール修理しました。

オーバーホールとは時計を分解してメンテナンスする修理です。

分解洗浄、オイル注油、精度調整、パッキン交換といった消耗品の交換などを一通りおこないます。

さて、お客様から「裏蓋を持ってきたので交換してほしい」というご希望です。

持ち込まれた部品は、純正にはないはずの裏蓋です。中身が見えるシースルータイプです。

本当に取付できるのか疑問でしたがお客様いわく大丈夫とのこと。

正直に申し上げて、この手の改造はお客様のほうが詳しいことよくあります。当店ではやろうと思っても、まず合う部品をどこで見つけられるかすら分からないのです。

以前から当店の修理をご利用いただいているお客様です。大丈夫かなと判断しました。

もし付かないなら元の裏蓋を使う条件でお受けしました。

オーバーホール修理完了　税込み1万円台

オーバーホールは完了してあとは裏蓋を支給品にて取付、といったときにトラブル発生。

パッキン交換したのですが、オリジナルと同じ厚みのゴムパッキンだとうまく取付できません。

もっと厚さがうすいものでないとダメそうです。合うものが見つかるまで試行錯誤となりました。

結果、合うパッキンが見つかって対応できました。ただし、防水性能への影響が心配なので念のためお客様にお伝えしてお渡しとなりました。

そもそも年数が経っている腕時計なので、防水には期待せず水や湿気に注意すべきでしょう。

今回も当店のご利用ありがとうございました。

注意：現在セイコーの非常に古い腕時計「４４」「４５」系の機械腕時計はオーバーホール修理受付をしておりません。

非常に古い時計のため保障ができないためでございます。

詳しくは店頭にてご説明いたします。

写真などはありませんが、思い出せる例でいくつかご紹介。

お客様がガラス風防を持ち込みされるも秒針がぶつかってしまうことがありました。針の調整をしてもうまくいかないため修理中止することに。

別の例でも似たようなお話が。文字盤の持ち込みされましたが、組み立てると針の動きに支障が出てしまう。結局中止という例がありました。

また、海外通販で手に入れたという支給部品が合わなかったりした例も。

当店で取り寄せできる部品ならよかったのですが、残念ながら入手できない部品でした。

お客様が間違ったものを注文されたのか、送った海外の人が表記を間違えてるのか。

または正しいものを送ろうとして違う部品を入れて送るなんて可能性もあります。

日本の取引先ですらある人間のミスです。ましてや海外となれば十分あり得ます。

海外の業者との取引で実際にありました。アパレル系を扱う他のお客様からも似たような話を聞いて「あるある」と笑ったことも。

自分で入手した部品なら自己責任で済みます。

しかし、得体のしれない支給品に面倒をかけられるのは気分がいいものではありません。

修理中止となれば料金をいただけません。

さらに困るのが手間と時間を取られるところです。他のお客様の修理が遅れてしまいます。

現状の依頼数を考えると「何でも引き受ける」はもう無理になってきました。そろそろ厳格に決まりを作るときがきたかもしれないと思っています。

トラブルが予想される部品の持ち込み修理は基本的にお断りしております。

どうぞよろしくお願いいたします。

(株)福田時計店は、群馬県桐生市で創業60年以上。

電池交換、オーバーホール、革ベルト交換、金属ベルト直しなど、腕時計の修理を承ります。

店舗情報や修理の受付について詳しくはこちら。